本日、新しくカーシェアリングを始める阿部さんのところへ、赤いヴィッツをお届けに行きました。
阿部さんは、震災時車ごと濁流に飲まれ、九死に一生を得るという経験をされています。
それ以来一度も車の運転をしていなかった、というより怖くてできなかった、という方です。
阿部さんと大木さんのエピソード
https://www.japan-csa.org/blog/report/activity/2012/04/22/255/
https://www.japan-csa.org/blog/report/thanks/2012/05/02/267/
ゴールデンウィークを挟んだことなどによって納車が遅れてしまったのですが、
その間も大木さんと阿部さんから何回も「ヴィッツはまだですか」と電話があったそうです。
お2人でとても心待ちにされていたというヴィッツ、本日ようやく届けることができました。
阿部さんの所へ車をお届けに伺うと、早速乗ってみたいがやはり怖い・・・ということで、
たけさんが助手席、私あやこが後部座席に座り、3人で近所をドライブすることになりました。
これまでは、友達にちょっと運転してみたら、と言われても絶対に運転席に座らなかったという阿部さん。
ハンドルを握るのが1年2か月ぶりで、ドキドキしながら出発です。
始めは、「ちゃんと走ってる?」「大丈夫?」とおそるおそるでした。
手は汗でびっしょりだとおっしゃっていました。
それでも、運転は初めからとてもスムーズで、ブランクを全く感じさせません。
阿部さんは19歳で免許を取り、高速道路のない頃、東京→石巻を10時間くらいかけて一人で運転されていたとのこと。
当時、女性は30人に1人くらいしか運転免許を持っておらず、周りの人は皆びっくりしていたそうです。
そんな長年の経験を、体はしっかり覚えていたようです。
順調に走り出すと、阿部さんは
「私、運転してる!こんな日が来るとは思わなかった。本当にうれしい」
と、本当に感激していらっしゃいました。
そして「たけちゃん、ありがとう!」とたけさんに握手を求め、私も握手をしました。
阿部さんは、何度も何度も、「うれしい」「信じられない気持ち」「ありがとう」とおっしゃっていました。
「今まで車が無くて不便だったけど、これからは本当に助かる」といった類の喜びの声が寄せられるたび、
よかったなぁ、と私も嬉しくなります。
もっといろいろな人にそう思ってもらえるよう頑張ろう、といつも思います。
でも、阿部さんの喜びは、なんだか特別です。
一台の車が、一人の人をこんなに嬉しい気持ちにさせたのですね。
そして、その一台の車には、いろいろな方の気持ちや思いが込められています。
私たちができるのはその橋渡しのような役目だと思っていますが、それでこんなに涙ながらに喜んでくださる方がいらっしゃるんだと、私も感動してしまいました。
そして、より多くの方にこのことを伝えたいと思い、ブログを書いています。
笑顔でハンドルを握る阿部さん
そのうち阿部さんは、「もうずっと運転をしていなかったのが信じられない、昨日まで運転していたよう」
とおっしゃるまでになりました。
「今度から、どこにでも行けますね」とたけさん。
すると、今度皆で一緒に温泉でも行きましょう、と阿部さん。
せっかく知り合えたのだから、これをきっかけにこれからも交流しましょう、とのこと。
そして、阿部さんも大木さんも、このヴィッツの提供者で静岡県から石巻まで運搬もしてくださった神谷さんご夫妻にとても感謝されています。
「大木さんと2人で、これから毎月神谷さんにお手紙を送ろうと話しているの」とおっしゃっていました。
これをきっかけに、神谷さんたちとも交流が続いていったら、私たちにとってもこんなに嬉しいことはありません。
久々の運転のあと。阿部さんは終始笑顔でした!
最後、すごく細い路地をバックで駐車した阿部さん。
私には到底真似できないドライビングスキルでした。
「明日からの生活が明るくなりました」と阿部さん。
これからきっと、赤いヴィッツはいろいろなところを走るでしょう。
ヴィッツお届け―1年2か月ぶりの運転
2012.05.17