ここ最近、高齢者ドライバーの事故のニュースが耳に入ってきますね。
確かに事故は痛ましく、亡くなる人がいるならなおさらのこと。
だけど、免許を手放すと生活ができないから、
手放すことができない人がいることも事実だと、
特に、石巻のような車社会の中で生活している私たちは痛感しています。
実は昨年末、協会のスタッフも赤信号無視の車に衝突される、という事故が発生しました。
お相手の方は80代後半の方。
もちろんこういった場面で話題にだしているのですから、
ふたりとも命に係わる重大事故ではなかったのですが、
スタッフは、しばらくは接骨院に通院する、辛い日々を過ごしました。
そしてお相手の方は、それがきっかけで免許を手放したそうです。
普段であれば終わる話なのでしょうが、わたしたちは
「運転生活の卒業の思い出が嫌な思い出になってしまったね。」
「その方の身近にコミュニティ・カーシェアリングがあれば…。
きっともう少し早く、免許を手放していたかもしれないよね。」
「そしたらスタッフもケガせずにすんだし、家族にも心配かけないことができたね。」
と、それぞれがこの活動の意義、そして改めて向き合うべき
「免許返納とその後の移動手段の確保」という課題を深く考えるきかっけとなりました。
そこで私たちが行っているコミュニティ・カーシェアリングの活動の中で
「免許返納」という問題とどう向き合っていくべきなのか考え、
すでに免許を返納した方へお話を聞いていくことにしました。
今回は、石巻市内のコミュニティ・カーシェアリングのグループの活動に参加しており、
2年前に旦那さんが免許を返納をした岩井さんご夫婦(82歳)にお話をお伺いしてきました。
現在は、奥さんと二人、復興公営住宅で暮らしています。
岩井さんは元々魚屋さんを営んでおり、旧桃生郡全域に
配達をしに行っており、車は仕事、生活の上でなくてはならない存在だったそうです。
ー免許返納をしようと思ったきっかけはなんですか?ー
返納したのは平成29年の12月。80歳の時だね。
震災で仙台の子供夫婦のところで暮らすようになって、
便のいいところだったから、そっから運転はしなくなったんだよね。
地下鉄でどこでも行けたから。
だけど震災もあったし、「もしも」のことを考えて運転はしなけども
免許証だけは更新するようにしてたんだ。
80歳で返納しようとは元々思ってたんだけど、
ここの復興住宅に引越してきてからは、バス停もすぐ目の前にあるし、
カーシェア会もできたから、もうなんのも心配なく返納したんだ。
ー移動の不安はなかったですか?ー
んん~…やっぱりバスもあるし、カーシェア会もあるし、
「まぁ、なんとかなっぺ」と思って。
今は仙台、東松島、市内に住む子供たちがちょこちょこ来て
買い物だ、なんだかんだで連れてってくれるし困らないね。
ー免許返納、カーシェア会への参加など、ご家族の反応はどうでしたか?ー
家族全員賛成!
そりゃもう喜んでたよ。
費用的にも助かるからね。
ーカーシェア会の活動はどうですか?ー
わたしは団地会長もやってるんだけど、他の人を見ていると部屋から出るきっかけになってるよ。
おちゃっこ会したり、近場にみんなで出かけたりね。
みんなとあっちこっち行けるのは昔みたいで嬉しいよ。
→以前に行ったお出かけの様子。
今度の気仙沼の大島は楽しみなんだ。
若い頃に行ったっきりだから懐かしいよ。
仮設の時と違って、部屋から歩いている人も姿は見えないし、
ドアも重いし、締まると孤独感を感じる。
ここの団地でも4割は高齢者世帯なんだな。
だから団地会でカラオケ会したり、花をみんなで植えたり、いろいろやってるよ。
でも大体出てくるのは女の人だね。
元気いいんだ。(笑)
「買い物行きたい」と思っても、前の日までに頼んでおけば連れてってくれるから助かるよ。
みんなカーシェアには助かってるね。
うちは大体月に3、4回くらい買い物とかで利用させてもらってるかな。
買い物だと荷物重いしね。
買い物は二人で行くんだけど、いつも同じスーパーじゃなくて今回はヨークベニマルだ、次は生協だ、
とかいろいろ行ってる。
病院に行く時はバスを使うよ。
大体月に2.3回かな。
あれこれ使い分けて生活してる。
と、笑顔で語ってくれた岩井さん。
免許を返納してからも、公共の交通機関と
『コミュニティ・カーシェア』をうまく使い分けて
便利に活用しているだけでなく、
お出かけも団地の皆さんと共に満喫されていらっしゃる様子を伺えました。
→カーシェア会のメンバーの方の自宅ドアに貼ってあるステッカー。
これがメンバーの証です。
———–
石巻市では先日、石巻市長が免許を返納した、ということがニュースとなりました。
またその際には市長より
「コミュニティ・カーシェアリングに注目している」
とのコメントもいただきました。
わたし達の活動は東日本大震災で車を失った方々への支援活動としてスタートしました。
ですが時は流れ、これから突入する超高齢化社会への備えの一つとして、
地域や行政からの問合せをいただくようになりました。
車がないと生活ができない地域において、
この仕組みが、地域に根付くことによって、
免許を返納してからも安心して住み続けることができるようになれば、と
願い、活動を続けていきたいと思います。
***ご協力のお願い***
これまで復興予算を主な財源として活動を行ってきた私たちの事業ですが、
復興が進むことに伴って3月で復興財源の委託事業が一つ終了しました。
となり、自主事業や民間助成金に頼らざるを得ない状況となりました。
依然と資金面では課題を抱えています。
今後も益々復興財源が縮小するため、
活動を継続・発展させていくためにはみなさんの応援が必要です。
ご協力をよろしくお願いいたします。