10月8日。
朝JR石巻駅に集合し、前日ご都合が合わず、現場視察に参加できなかった方々と共に再度吉野町復興公営住宅でプチ現場案内を行いました。早朝にもかかわらずそうそうたる方々に関心を持って集まっていただけること、そして連日に関わらず快くご対応いただく住民の方々にとてもありがたいなと思いました。
ちょうど病院までの外出支援の機会と重なり、予定されていた方が1名座談会に参加できなかったのですが、出発の場に居合わすことができ、ちょうど活動の様子を垣間見ていただく事ができました。
前日同様楽しい座談会を終え、シンポジウム開催場所の石巻市役所に皆様と共に向かいました。
どれくらいの方が来ていただけるかな。。。と不安に思っていたのですが、ふたを開けてみると満員御礼で用意していた資料も2部しか残らずちょっとひやひやしてしまいました。
最初に実行委員会の共同代表の竹中徹先生にご挨拶いただきました。
続いて亀山紘石巻市長にお言葉をいただきました。
「コミュニティカーシェアをとおして交通弱者、医療弱者の無い社会を作っていきたいと思います。今後の取り組みについては行政としてもしっかり取り組んでいきたいと思いますので、今日のシンポジウムの議論を参考にさせていただいて、新しい石巻の新しいまちづくり、社会を作っていきたいと思っています。」
と非常にありがたいお言葉をいただきました。
続いて今回「地域自立支援事業」としてこのシンポジウムを推進させていただいた復興庁の加藤輝雄様(宮城復興局支所長)から宮城復興局長の武政功様の代読としてお言葉をいただきました。
3名のお言葉をいただき、石巻とオーストリアの事例紹介が始まりました。
まずは、私の方で石巻の事例を紹介しました。
続いてウィーン工科大学交通学研究所の柴山 多佳児先生から「カーシェアリングの発展と草の根・コミュニティ型カーシェアリング」というテーマでカーシェアリングについて、世界的な変遷と、それぞれのスタイルを説明いただき、私たちのコミュニティ・カーシェアリングがこれまでのBtoCやPtoPのカーシェアリングとは異なることをご説明いただいた上で、2つの事例の共通点と相違点を解説してくださいました。
「それぞれ閉じたグループがあり、それぞれに車とコーディネーターがいる。日本では個人、オーストリアでは個人だけでなく小規模自治体等もコーディネーターの役割を担う。更にオーストリアでは一人が複数のグループに所属してもいいという風になっている。」
「共通点も多い。時間分割を基本に、相乗りオプションがあり、コミュニティが基軸になっている。EVの活用にフォーカスし、地方部で推進できている。」
「スタート点が違う。オーストリアでは技術面からスタートし、コミュニティを強化している。日本はコミュニティからスタートし、技術面はこれから。」
そして下記のように締めくくられました。
「両国は出発点は違うが補完できる可能性がある。」
午前の部の最後はCARUSO carsharing eGenのChristian Steger-Vormetz(クリスチャン・スティガー・フォーメッツ)氏から「オーストリアのコミュニティ・カーシェアリング -過去・現在・未来-」というテーマで、ヨーロッパでのカーシェアリングの変遷、CRUSOの設立の経緯と現状、将来的な展望を語ってくださいました。
「地方行政のサポートがあると上手くいくという経験が多い。」ということと、「関係者すべてを巻き込むために協同組合という形を選択し、結果、運輸連合(州の中の公共の交通機関の調整を行う機関)がメンバーに加わったことで、鉄道等の公共の交通機関との連携が始まった」ということが印象的でした。
ちなみに今回、CDS経営戦略研究所様のサポートの元クリスチャン氏の話(ドイツ語)は全て同時通訳でヘッドホンで来場者に伝えられました。
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このシンポジウムでは、関係団体の展示ブースが設置されており、東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト、電気自動車普及協会、石巻専修大学、石巻市、日本カーシェアリング協会の展示がされていました。
特に今回のシンポジウムを共催いただいた東大と東北大による東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクトのブースで展示されていた各種シミュレーターは大盛り上がりでした。
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午後の部では、それぞれの分野の専門家の方々からお話をいただきました。
東北大学 未来科学技術共同研究センター 副センター長・教授 鈴木 高宏先生から「石巻カーシェアの意義と可能性 ~EV、ITS、エネルギー、コミュニティ+αのシェア~」というテーマでご講演いただきました。
石巻のユーザーグループで行われている電気自動車での旅行「EV旅行」について、通常航続距離が短いといったEVのネガティブな面を、充電のために様々なところに立ち寄り楽しみに変えていることがコミュニティが加わることによって生まれる価値として紹介されていました。
また、私たちのような地域の小さな交通の助け合いをシステム面で支える柔軟性のあるICTプラットフォームの必要性をお話しいただきました。
株式会社NTTデータ東北 代表取締役社長 樫部昌弘様から「情報技術がもたらす未来の可能性」というテーマでご講演いただき、ICTのテクノロジーが地域コミュニティにどのようなインパクトをもたらすのかご講演いただきました。
様々なデバイスを通して、人と車とあらゆるものがつながり、それがシェアリングやライドシェアの推進を支えたり、地域的には交通渋滞緩和等を実現している既に行われているサービスや実証実験などご紹介いただきました。
政策研究大学院大学 教授 家田 仁先生からは「共助のモビリティの可能性」というテーマでご講演いただきました。
家田先生からは、『モビリティ確保』という大きな視点から、その安全性と利用者の保護の観点から『重装備』にならざるを得ない交通事業者の実情と事業者に責任を求める日本の国民性といった背景と、そんな中で新たな枠組みとして出てきた私たちの取り組みについて今後何が重要かわかりやすく解説いただきました。
そんな中
「『人柄』を組み込んだカーシェアリングは世界で初めてではないか」
とお褒めの言葉をいただくと同時に
「法的な位置づけが曖昧なため、そこをしっかり作る必要がある。それは道路運送法に付け足すというのではなく、新しい概念に適応する新しい法律を作る方が健全だと思う。」
といった、目が覚めるような提案をいただきました。
最後のプログラムとして、各講師のみなさまに石巻じちれんの増田会長を加えてパネルディスカッションを行いました。
モデレーターは柴山先生で
コミュニティ・カーシェアリングの可能性と課題
コミュニティ・カーシェアリングと各種交通機関との連携
石巻で今後どのような展開が考えられるか
といったテーマで話が展開されました。
増田会長からはユーザからの視点や気持ちが語られました。
「仮設に困っている人がいたので力になれないかとう思いで取組を始めた。」
「利用の履歴を管理していくうえで、自分はパソコンが得意ではないのでICTよりも今やっているような日誌に直接記入する「紙の管理」の方がやりやすい。他の利用者の方も自分と同じような人も多いと思う。」
クリスチャンからは
「オーストリアでは社会的に高学歴の方がステータスとしてカーシェアリングを使うことから始まった。石巻は車がなかったからやる必要があったという点が違う。しかし自分で車を持てない人もだんだんメンバーになるようになってきた。」
「ICTを導入して便利になった。いかにユーザーに使いやすくしていくかが難しく重要である。高齢者でも使えるようなインターフェースをどのように作っていくか。これはNPOだけで解決できることではない。民間企業が積極的に参加することが重要である。」
鈴木先生からは次のような問題提起もありました。
「石巻市では半島部、へき地での展開に期待が寄せられている。しかしその場合の共助の外出支援は、長距離となるためドライバーとしての負担が大きい。そこで公共交通機関やタクシーと補い合うことで、コミュニティ・カーシェアリングの持つ特異な部分を発揮できるのでは。それについて詳細に設計が必要だが、地域としての課題は、その設計をするための前提となるデータがない。ICTの仕組みを強調しているのは、そのためのきちんとしたデータを取りを行い設計に生かすとうことと、その設計したものの効果を客観的に図れるようにするということが重要であると考えるためである。」
私の方からは、
石巻の利用の現状を説明し、また、今後の展開として、CARUSOの予約システムをテスト的に使用することを紹介しました。
家田先生からは
「独自の活動なので、わかりやすく伝えるためにも独自のネーミングをぜひつけてほしい。また、この取り組みは契約ではなく善意で成り立っている。これからも継続的に続けていくためには位置づけを法的根拠を持ってやったほうが良い。」
といったアドバイスをいただき、次のように励ましのお言葉をいただきました。
「この取組はユーザーのニーズから始まっている。これは、意外と少なく貴重である(大体は事業者や研究者の側から生まれている)。また、重装備で取り組むのではなく、あくまで軽装備(自己責任でスピーディに行うこと)で取り組んでいることもいい。そして、取り組んでいる人達が若い。日本の One of Best Practices だと思う。みんなで応援しましょう!」
来場者からも『コミュニティ・カーシェアリング』の可能性について貴重なご意見をいただきました。中でも、石巻市立病院開成仮診療所の長先生から、友人の数が少ないことが健康に大きな影響を与えていて、健康や地域包括ケアの分野でも大きな可能性を感じていると興味深いご意見をいただきました。
様々な議論が生まれ、非常に有意義なディスカッションを行うことができました。
最後に実行委員会共同代表のクリスチャン氏からの挨拶が行われました。
その際、オリジナルコラボTシャツを紹介してくださいました。
このTシャツは彼がオーストリアで作成して持参してくれたもので、
カーシェアリング協会とCARUSOのロゴの上についのように綴られていた。
「 カーシェアリングは友達を作ります。Auto teilen macht Freunde 」
Tシャツに加えて、素敵なボトルを受け取り、クリスチャン氏と共に壇上のまま
「コミュニティ・カーシェアリング・ネットワーク」の説明を始めました。
実行委員会のメンバーの皆さんとこのシンポジウム実施に向けて取り組んでいく中で、『コミュニティ・カーシェアリング』についてより多くの協力と参画を募り、このコンセプトについて研究・実践を行うことでより大きな貢献につなげていきたいといった話がありました。そして、クリスチャンが日本に来日してから数日間、様々な話し合いをする中で、お互い継続した交流を行い、お互いの活動を高めあう連携を約束しあうことができ、『コミュニティ・カーシェアリング・ネットワーク』を設立することになりました。
設立趣意書をお互い読み上げ、調印を行いました。
私たちは、「コミュニティ・カーシェアリング」を通したより良い社会の創造を目指し、お互いの友情と信頼を深めながら、「コミュニティ・カーシェアリング」のコンセプトの発信および相互協力を行います。
We will aim to create better society through ‘Community Carsharing’ and deliver the concept of ‘Community Carsharing’ and cooperate mutually while deepening our friendship and trust each other.
こうして2日間のシンポジウムは無事、幕を下ろすことができました。
シンポジウムを開催するにあたり、非常に多くの方々にご協力いただきました。
この2日間だけでも、石巻専修大学舛井ゼミの学生のみなさんをはじめとする当日ボランティアの皆さんのご尽力で当日のスムーズな運営や記録を行うことができました。心より御礼申し上げます。
(講師の皆様、共催いただいた東大・東北大の先生方、実行委員会メンバー、復興庁・石巻市の担当者様と)
(当日の運営を支えてくださった当日ボランティアの皆様と。ちなみにクリスチャンからいただいたTシャツ着てます。)
『コミュニティ・カーシェアリング』という分野に多くの方々に関心を持っていただいていることにとても感動いたしました。この分野を研究・実践し、制度的な分野においてもしっかりとした提言を行うために、多くの方々の協力と参画を求めながら推進していけたらと思ってます。また、パネルディスカッションの中でも話をしたのですが、ぜひ第2回を実現したいと思います。次回はもしかしたらオーストリア?!
シンポジウムの前の日に、クリスチャン氏と今後のことについて話をしている際、
「オランダに私達と同じようなコミュニティ運営型のカーシェアリングを行っている事業者があるようので、次回はぜひそこも声をかけよう」
って言っていて
「え!?オランダにもあるの!!!」
といった、やり取りもありました。国内外の他の地域でも、いろんな実践があるかもしれませんね。
このシンポジウムを通して、夢が広がりました。
そして、やるべきこともたくさん見えてきました。
更に一歩、前に進もうと思います。
応援、そして、ご参画、よろしくお願いします!
【報告】シンポジウム2日目と『コミュニティ・カーシェアリング・ネットワーク』
2016.10.18